栽培に関して

以前栃の葉書房の「シュンラン」にも書きましたが改めてここに掲載させて頂きます。栽培に関してだけでなく花の矯正の仕方など写真入りで詳しい説明が掲載してありますのでそちらに関しては「シュンラン」をご覧下さい。
またありきたりの栽培法をここで書いてもしかたないので絶対してはいけないこととか発色法とか書いていきます。

春蘭は蘭科植物の中でもたいへん丈夫なランです。この丈夫さが仇となって失敗することがあります。たとえ根傷みしたからと言って簡単に枯れてしまう物ではありません。ここでは枯死に致る原因を述べます。
          

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寒さによる場合
寒さの厳しい冬に蘭に大きな痛手を受ける場合があります。多くの株が一時に枯れてしまうのはこれしか考えられません。冬場にいい加減な管理をしていても、春蘭は症状に現れません。見た目では判らないのでついつい過信してそのままにしてしまいます。春蘭は少しくらい凍っても問題ありません。ただ、鉢の中まで凍ったり溶けたりを何度か繰り返すと重大な結果を招くことになります。新芽の動き出す時分(5月)に一気に新木の方から枯れます。もう後の祭りです。小型温室のような状況下で、夜間零下になって日中温度が25度にも上がるというような極端な温度差がいけないのです。もし凍っても暗いところでゆっくり溶かします。昔のムロのような低温下でも温度変化の少ない管理を心掛けてください。温度差を抑えるという点で冬の遮光も必要に応じて考えて下さい。
肥料が原因の場合
蘭作りで一番むづかしいのが根作りです。ただ肥料をやるだけで大きくできるなら苦労しません。まず健全な根を下ろさせなければ上作は望めません。根傷みで急に枯れることはありませんが作落ちによる枯死につながることも多いようです。ここではスッポ抜けについて述べます。新芽が伸び始めるとそれを大きくしたくて水肥を与える人がいます。絶対してはいけません。
希釈率をかなり抑えられる方は別ですが。スッポ抜けを起こした人に聞くと100%水肥を与えています。スッポ抜けは一種の軟腐病と思われます。新子が抜け、放っておくと元株まですべて枯れてしまいます。早めに気付いたら新子をカットします。予防はストレプトマイシンがよいと思います。取りあえず6月以降は肥料分を切る心構えがよいと思います。紺地の強い濃緑色葉の品種は特に日に弱くまた肥料にも弱いことを頭に入れて置いて下さい。
日照が原因の場合
日照を出来るだけ採ってしっかり作るのが望ましいですが、品種により日照に対する耐久性がまるで違いますのでそれを考慮して下さい。ここで問題にするのは冬場の採光です。バルブを太らせるために秋になって日よけを外す人もいます。図物を仕上げるためにそうする人もいます。しかし冬になると日照が傾き蘭舎内に1日中日が差し込むようになります。12月以降寒さと余分な日差しで葉色が極端に悪くなってしまいます。それでも昔は枯れるということはありませんでした。最近は地球環境の問題で紫外線の強さが違います。植物を栽培している人間には学者さんより近年の自然環境の変化をより実感できると思います。特に紫外線については悪影響という点で実感できるのです。冬から日を当てたままにしますと凍結の時と同様紫外線の増す春になってから枯れてしまう物が出ます。柄物に日を当てるにしても直射を避け、11月以降は必ず寒冷紗を下げることをお勧めいたします。
           
          
発色法
赤花を中心に春蘭の色花を良い色で咲かせるために花芽の遮光を実施します。花芽は7月下旬から9月にかけて形成されます。それ以前に着いた花芽は通常除去します。花芽は2年木を中心に付きますので夏場水くれをしながら花芽を探すのも楽しみの一つです。完全遮光をするにはかなり小さいうちに花芽を見つけなければなりません。花芽がふくらんでからでは遅いのです。左画像の赤○内に花芽が確認できます。水苔で覆うやり方もありますがより完璧に行うには右画像のように枠を作って砂がけをします。ここで用いたのは排水用の塩ビ管を3cmの幅で切ったものです。据え置いたら日光砂をかけます。あとは約1ヶ月くらいして花芽がふくらんだら枠を外しキャップに切り替えます。放っておくとかけた用土上に花芽が出てきてしまいますので砂がけした意味がなくなってしまいます。
      

遮光の必要性
完全遮光をすると澄んだきれいな花色で咲かせられます。何でもかんでも遮光する方も見受けられますが、あくまで品種の特性を考えた上で実施すべきです。紫花や南紀などは遮光しません。ただし秋から冬場暗めの所に置く方がよいです。大虹も遮光しない方が濃い色に発色します。遮光するのは赤花・朱金花・黄花・白花系などと一部の散斑花です。散斑花は特に全く遮光しない方がその特性で咲かせられる品種と適度な遮光で特徴を引き出せる品種があります。また国華や黒御簾など黒花系は遮光します。
完全遮光した赤花はキャップを外した段階ですでにきれいな桃紅色になっているものもあります。次項で述べますがキャップを外す時期によってはそれ以上の花色の濃さは望めません。女雛や天心など素質の優れた品種は遮光なしの方が黒々したような濃紅色で咲きます。
キャップを外す時期と理由
自然状態で赤花が発色するのは2月中旬以降です。充分寒さにあたって発色してくるのです。12月下旬赤花はキャップを外します。外す時期も品種によって微妙に違うべきですが遅いのよりはこの時期に外した方が無難です。キャップを外して色がのっていなくても心配いりません。キャップを外してから2ヶ月冷暗状態が保たれれば発色してきます。遮光が甘い場合は余計にキャップを外さないと悪い色のまま咲いてしまいます。遮光がうまく行きすぎている場合も同じです。遅くまでキャップをかけておくとピンク色で咲くだけで赤花品種の本来の特性では咲きません。朱金色はぎりぎりまでかけておくように言われますが赤みの強いタイプはやや早め、開花1ヶ月前にはキャップを外した方が良い花色になります。銘品黄花の多くは後冴え性ですので、黄色みを強く出すにはやはりぎりぎりまでキャップをかけていてはいけません。後冴え性の弱い黄花系統などはこの限りではありません。 
赤花は日を採るとよく言いましたがそれは間違いです。キャップを外してからはもちろん花が咲いてからも強い日照は避けます。花芽に陽があたると温度が上がって花芽が動き出してしまいます。神楽姫や武姫などは一番と言って良いほどの濃赤紅色の発色をする品種ですが早咲きで花芽が早く動き出してしまいます。この関係で発色しきれないうちに開花するので本来の色がなかなか見られません。寒い地方の方が赤花の発色がよいのは完全休眠状態を保てるからなのです。また赤の色素は強い日で壊れてしまいますので咲いてからも強日は当ててはいけません。
要はキャップを外してから出来るだけ薄暗い所に起き花芽を冷やし、出来れば2ヶ月完全休眠状態を保てるかどうかです。

        植え付け角度
画像Aのように新子が年々下へ潜ってしまう場合があります。芋が水色の点線の角度になっていますが植え替えの際これを赤点線の位置に角度変更して植え替えます。芋が画像Bのように水平になるようにするわけです。画像Aのまま植え込むと新子はますます下へ潜り正常な形で出芽出来ない場合も生じます。
      



画像Cは植え込み完了画像ですが大夫傾いた状態になります。新子はまっすぐ上に向かって伸びますのできれいな形の新木に仕上がります。

余談  画像Cのように植え込んだ商品をお買い上げのお客様で傾いて植えてあったのでまっすぐに植え替えたというお客様がいました。