イワヒバ斑の概念

イワヒバ斑の名称について
イワヒバの斑の名称については古くより慣用的に用いられている呼び名に加え当園独自に使用するものがあります。
人によって表現が異なったり斑芸の概念が確立されていませんので独断と偏見で名称の定義付けを行い使用致します。
@先斑
葉の先端部から現れる斑を称します。時には先斑が深まって葉元まで覆うこともあります。白斑系の多くの品種は中斑があまり目立たないため日照斑品種に対して先斑品種と言えるかも知れません。丹頂、雲井鶴、晃明殿などです。
日輪状に現れるため日輪斑と表現してされている場合もありますが紛らわしい使い方です。
A
中斑
葉の中央部に現れる斑を称します。斑切れ良く現れる品種もありますし曙斑的に現れる品種もあります。
盛夏の頃から現れるこの中斑を狭義に
日照斑と呼んでいる場合もあります。まず先斑を現してそれが移行する形で中斑になる品種と先斑をほとんど現さずいきなり中斑を現す品種もあります。
B
鹿の子斑
葉全面に現れる不規則的な斑を称します。マダラ斑と言っても良いかもしれません。明星や轟など緑の部分をはっきり残すこのタイプの代表的な品種です。
C
砂子斑
斑が薄く現れているような部分に対して、あるいは散斑に対して古くより使用されているようです。言葉の概念が一番はっきり確立されず違うタイプの柄性にも使用されていますので定義づけの難しい用語です。鹿ノ子斑品種の内、緑の部分に斑が散斑状に流れ込む品種に使います。九重錦、錦襴織、駿河錦など基本的には鹿ノ子斑品種と考えますが斑が流れますので砂子斑品種と言っても良いかもしれません。。古金襴も同類ですが葉全体に斑を現しますので砂子斑品種の代表格と言えます。白晃麒麟のような類も砂子斑と説明される向きがありますが言葉の概念を明確化するために避けるべきです。
D曙斑
日輪状に現れた先斑に「春の曙斑」と表現している場合もあるようですが「砂子斑」同様曖昧な使用法と考えます。春蘭などでは斑切れのはっきりしない大虎斑に使用します。イワヒバでは先斑を現さない暁や白鳥、旭龍などの中斑に使用するのが妥当と考えます。
E散斑(多くは白散斑)
先斑は現れますが葉全体が白っぽくなり中斑は目立たなく曙斑という表現でまかなわれていた品種の柄性です。白晃麒麟や金牡丹、平成錦がこれにあたります。
F
掃込斑
散斑の一種ですがハケで掃いたような斑のタイプです。友白髪などです。
小雨錦や日之出鶴は斑色が黄色いですがやはりこのタイプと言えると思います。
G
染め分け斑
花で言うと絞り咲きや咲き分けと言った芸です。瑞光錦や一天四海、深山錦などがこれにあたります。
★表面的には緑の葉に黄色い斑が出たように見えますが、緑の部分にも潜在的に散斑があります。その散斑が部分的に派手に現れて染め分けとなるわけです。緑と思われる部分を挿し芽しても子供に斑が現れるのはこのためです。よく観察して見て下さい。品種によっては緑の部分にはっきり散斑が見えるものもあります。
H
分離斑
ほとんど先斑ですが緑の部分と完全に境を分けるタイプです。高砂や天鵞絨がこれにあたります。
爪斑と言う表現が使われます。
I赤斑
紅葉色は本来的には全体が紅葉し斑の部分が特に紅色や朱色、橙色など艶やかに染まるものです。赤斑品種は白や黄色の斑を現さず緑の部分にいきなり赤い色素を現してきます。紅孔雀は秋が深まっても緑の部分は緑色、赤く染まった部分は別といった感じです。秋には緑も色あせますのでむしろ蘇生後の春には緑の部分も赤斑の部分も鮮明になって一時素晴らしいコントラストになります。茜錦、紅孔雀の他長寿、紫雲城などがこの部類です。
J金銀斑
御所錦に代表される柄性です。春に動き出す先斑は白斑品種のように白味が強く夏場の先斑の色は強日では黄色みがかってきます。下葉、特に胞子葉の先は白いのでこのあたりの色合いを金と銀になぞらえたようです。一番わかりやすいのは金銀獅子です。
K錦斑
不規則に斑芸を現す金銀斑品種に近い芸です。春日錦、富鷹乃華、常盤ノ光などです。先斑を伴うこともあります。金銀斑品種もこのタイプの一種として良いような気もします。
L日照斑(日輪斑)
イワヒバ界ではメインとなる斑芸です。まずは先斑を現し、中斑に移行します。先斑も中斑も日輪状に現れますので日輪斑とも総称されます。@とAを合わせ持った芸と言うことになります。

★中間的なあるいは複合的な斑の出方をする品種も多いので一言で何々品種と言い切れない場合が多いです。
先斑、中斑と言う概念の斑はイワヒバの本質的な斑の現れ方ですので多くのイワヒバに内在します。



イワヒバ斑の発現期

イワヒバの品種はたくさんありますがそれぞれの品種によって斑の発現する時期が違います。

@第一発現期・・・紅葉が覚めた5〜6月葉が伸び出し始める時期(イワヒバ的には春と表現する時期)   
主に白斑系の品種がこの時期から発現します。丹頂・雲井鶴・晃明殿などです。気温がまだそれほど高くないのと昼夜の気温差があるためだと思います。気温が上昇する夏場は全体に緑色になります。いくらかは中斑(日照斑)も現れますが鑑賞に値するほどの芸はしません。八重爪も白くはありませんがその名の通り先斑が優先される品種ですのでこの時期に葉先に発現す珍しいタイプです。白斑系の他に暁や黄衣仙など一部の黄色の中斑品種もこの時期に斑を現します。先斑をほとんど現さずいきなり中斑が出てきます。ただしこれらは秋口からの葉芸が残っていると考えた方が良いかもしれません。これらも気温が上がると暗んでほとんど緑色になります。
紅葉明けから多くの黄葉品種は黄色が冴えますし鹿子斑品種も鮮明な柄性を現します。
※泰山宝は日照斑品種で斑色も白いわけではありませんが早い時期から先斑を深める珍しいタイプです。

A第二発現期・・・梅雨明け土用頃、7月中下旬     
梅雨が明けて急に気温が上がり日照も真夏のものになるこの時期に多くの日照斑系の品種が見事な芸を現し初めます。先斑を現しだんだん先斑を深めていきます。品種や株の状態次第では葉全面を斑色に染めます。基本的には一番急激な変化をする時期です。
※白鳥や越の誉など気温の上昇とともに白系の中斑を現します。一種の白斑系品種と考えられますが先斑をほとんど現さずいきなり中斑を現します。そして盛夏以降暗んでゆきます。

B第三発現期・・・お盆頃
日照斑品種の先斑が深まり葉先に緑が現れ始めます。先斑から中斑に移行していく時期です。昔は残暑が厳しくてもお盆頃には夜温は少し下がり初めます。それによって葉先に緑が乗ってくると考えられますが、近年9月まで真夏日が続く現状では日照斑の発現の仕方も順当ではありません。先斑が深まる一方でなかなか中斑に移行しない場合が多くなっています。柄が派出になり過ぎる株、もしくはそのような品種は肥料分を抑える必要も生じます。


C第四発現期・・・秋口から10月
夜風を涼しく感じてくる時期です。 青くなっていた丹頂、玉宝、晃明殿などの先斑系の白斑品種が斑を戻してきます。
銀世界や貴代富士など白さが増しますので日照に注意が必要です。

日照斑の部分に徐々に紅葉色を現してゆきます。品種によって違いますが強日で柄が良く出た株は早めに色付き始めます。
赤斑系の品種は気温が下がるのと平行してこの時期から赤斑を発現してきます。


※赤斑品種ばかりでなく他の品種も紅葉色で蘇生しますので春先も「春の紅葉」が楽しめます。紅葉色が抜けきってから第一発現期が始まります。むしろ蘇生後の方が赤斑品種や黄葉品種は鮮明な色が楽しめます。

地球温暖化のため気候が昔と違いますので上述した発現期にヅレが生じています。また同じ系統の柄性でも発現期が違う場合もあります。

先斑と中斑(日照斑)について

先斑と中斑はほとんどのイワヒバに潜在しています。丹頂など白斑系品種は先斑として現れますが中斑がないわけではありません。観賞できるほどの中斑にならないだけです。黄葉品種の栄獅子なども強日で鮮明な中斑を現します。先斑と中斑、どちらも観賞できる状態になるのが日照斑品種です。日照の強い時期に現れますので昔から単に日照斑と言いますが本質的なとらえ方でありませんのでここで言うところの日照斑でない品種にも使用されていました。 

散斑品種や砂子斑品種と表現するものも先斑と日照斑が存在しますが散斑や砂子斑に覆われているため鮮明さに欠けるだけです。
私見ですがすべてのイワヒバ(野生種も)に先斑と中斑の遺伝子がわずかばかりでも内在しているように考えます。だからこそこれだけたくさんの変異種・斑入種が発見されているのではないでしょうか。
斑の現れ方を検証しながら栽培するとより深みのあるイワヒバ栽培になるでしょう。


斑のでなくなったイワヒバについて

イワヒバは土のほとんど無い岸壁に自生するものです。何年も植え替えしなくても水さえ与えていれば成長します。ただしそのような状態では斑が全く出なくなってしまいます。時期にもよりますが植え替えただけでその年のうちに斑が発現して来る株もあります。イワヒバの斑は肥料分と日照が重要な手がかりとなります。幼苗が派手な柄を現すのは土中に根を下ろし肥料分を短絡的に葉まで運べるためと考えます。ですから植え替えして根の活動を活発にしてあげるだけでも微量な用土中の肥料分だけで斑を現してくる訳です。根茎の上がった古株は用土内の根は生育が衰えてきますので斑を楽しみたければ根茎部分に肥料分を効かせることが必要です。水肥は5〜6月中に与えます。ハイポネックス2000倍程度でしたら月に何回かあげて良いです。古株の鉢内の根はむしろ肥料分を控え老化を遅らせるよう心がけるべきです。ただし大きくても土中の根の活動が十分予想できる株は元肥も有効です。

紅葉について

イワヒバは秋の紅葉も見所の一つです。基本的に日照が強いほど紅葉も強くなります。日照が強ければ斑も強く出て紅葉も艶やかになるのです。ただあまり紅葉させすぎると翌年蘇生したときに葉傷みが現れます。単に日の採りすぎですが紅葉もほどほどにといった感じです。